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地域福祉活動レポート

令和5年度 山科区の地域福祉を考える集い【報告】

2024-03-10
カテゴリ:山科区域
オススメ
「生きづらさを抱える方を地域ぐるみで支えるということ」
 「その時は、しんどい気持ちをひとに言えませんでした。」いわゆるヤングケアラーだった方の言葉。
 貧困・虐待・孤立・孤独・病・障害…「生きづらさ」の背景や状況は様々ですが、問題をひとりで抱えこんでひきこもったり、孤立・孤独に陥る方が少なからずおられます。困りを周囲や他者に相談できる、「つながり」を大切にする地域、誰もが生きやすい地域をつくっていくためには…学区社会福祉協議会の役員、民生委員・老人福祉委員、支援機関の方々108名にご参加いただいた「山科区の地域福祉を考える集い」にて、共に考えました。

主催:山科区地域福祉推進委員会(事務局:山科区社会福祉協議会)
日時:令和6年2月19日(月)
開場:京都市東部文化会館

★コーディネーター 児嶋 亮 氏
(桜花会クリニックデイケアセンター医療技術室室長代行)
【報告①】親子支援ネットワーク♪あんだんて♪ /家族支援ネットワーク♪らるご♪     福本早穂さん
「不登校からの回復プロセス」
 今、不登校の子どもたちが増えています。2022年度小中学校不登校生徒数は、29万9048人、いじめ件数は68万1948件にまでのぼります。社会の変化が加速し、子どもたちは常に競争、評価にさらされ、いつも何かに追われている状況です。
 また、学校のマンパワー不足、親も多忙、そういった環境で、子どもの話をゆっくり聴いてくれる人も少なくなっているのではないでしょうか。
 不登校の子どもたちは、オリジナルな成長過程をたどっていると考えています。学校が中心ではなく、家を拠点、居場所にして、好きなことややりたいことでエネルギーを貯めて、外(人)と繋がっていく過程です。
 よく、「見守る」という言葉が使われますが、何もせずにみているのではなく、本人の成長・回復過程に合わせた見通しをもつことが大切です。キーワードは、「安心・安全」で、「よかれと思って」先回りするのではなく、本人が「決められる自由」を尊重し、環境を整えていくことができればいいですね。
 ポリフェーガル理論を用いた自律神経の働きからみても、恒常的なストレスで不安や緊張が高ければ動けなくなり、休むことが認められる「安心・安全」な環境にいると再び動きはじめることができる、ということが言えます。
 ♪らるご♪では、講座や親の相談会も開催しているので興味のある方は、ぜひ参加してください。

※福本さんの活動について、ぜひHPにて詳細をご覧ください。
  ↓

能登半島地震被災地の避難所
【報告②】障害者地域生活支援センターからしだね 武山世里子さん
「障害者支援の現場から」
 生きづらさを抱えている子どもの親とかかわっています。しかし、親自身に精神面でのしんどさがあり、親だけに「頑張って」と言うことの限界を感じています。
 さまざまな理由で自宅でこもりがちの生活をされている人たちは「自分が外で何かできる想像がつかない」「自分は社会のお荷物だ」と感じておられる方が少なくありません。家族以外に、地域に居場所となる“人”がいてくれたり、「自分がやらないと」と思える“役割”がつくれたらどれだけ素敵だろうかと思います。

「能登半島地震の被災地から」
 被災地へ避難所運営の手伝いに行ったのですが、そこには普段から自宅にこもりがちの生活をしている方がおられました。避難所での衆人環境にしんどさを訴えておられました。障害ゆえに様々な事情で避難所に“行けない”方もたくさんおられました。
 災害時に生きづらさを抱えた人が守られるには、平時にどれだけ地域の人とつながっているかがどんなに大切か実感しました。みなさんと一緒に、一人の人をいろんな角度から知ろうとしたり、何ができるのかを立場の異なる人と考えてみたり、できそうなことからやってみることができたらいいなと思います。
山科醍醐こどものひろば 活動の一場面
【報告③】山科醍醐こどものひろば 村井琢哉さん
「子どもたちが安心できる場所を」
 「地域で育つ子どもたちの環境づくり」をテーマに、体験活動を中心にしながら、悩みや困りを拾いあげ、彼らの生活も応援していく団体です。子どもたちと関わる大人が増えることを願い地域の中で活動を広げています。
 遊びに来た子どもの第一声は「疲れた」です。大人に怒られないよう必死で休めていないんです。「疲れた」を言葉で表現できない子どももいます。そして、大丈夫じゃないときほど「大丈夫」と言います。「大丈夫」と言わなくなった瞬間には自傷行為や不登校など次の段階に進んでいることが多いです。また、児童虐待やいじめが増加しており、不適切な養育環境に置かれる子どもが増えています。
 そういった背景からどのような活動を創っていけばいいのか考えていただけたらなと思います。地域での活動が子どもにとっては唯一の救いの機会なのかもしれない。助けてくれる人と出会えるチャンスだと思っているかもしれない。日常生活の延長に支えてくれる場所とか愚痴を言える場所とか極端にいうと寝れる場所とかそういう場所があるだけでずいぶん変わってくると思います。
 子どもの権利は優遇や特別扱いではなく当たり前に備わっているものです。当たり前の権利を行使できる環境について考えなければならない時代にあると思います。
~参加者からの声~
  • 不登校の時、家をこころを休めて「充電」できる場にするというの印象的。家庭をまるごと受入れて、見守りができる社会や地域が必要だと感じました。 
  • 子どもの権利、休むこと、遊ぶこと…「当たり前を埋め直す」という言葉が印象に残りました。 
 
  • 日頃からあいさつからはじめて、子どもたちに顔を覚えてもらい、安心をあたえたい。。
  • 様々な背景がある「生きづらさ」。「その人のストーリー寄り添う」という言葉がすべてのを大切にしたことだと心にささりました。
 
  • 家庭以外とのころ…地域の中で家族的存在が増えればいいな。
  • 能登半島地震の被害でさらに困りを抱えている要支援者の実情。普段から気になる家庭に声かけすることを心掛けたいと思います。
  • 困ってそうに思って訪問しても「困ってない」と言われることもあります。知られたくないのかも。「大丈夫」は大丈夫でない…温かく見守っていきたい。
  • しんどいからこそ相談しづらい…一歩踏み出す声かけや、参加できる地域の居場所づくりの大切さを感じまた。
 
  • 「孤立をなくしたい」と多くの地域で活動されている方の熱心さが感じられました。
  • 行政や支援機関、地域役員の方同士が、もっと「顔の見える関係」で、互いの困りごとを相談しやすい仕組みがあったらと思いました。
 
  • 認知症の当事者が店員になる「注文を間違えるレストランテ」。山科区でもよい場所があればやってみたい。
  • 「生きづらさ」のある若者、高齢者、障害者…当事者の小さな会、集まれる場所があったらいいなあ。
【メッセージ】
「コーディネーターからのメッセージ」
 コロナ流行によって生じた孤立孤独は、生活だけではなく、こころの寛容さにも影響を与えたように思えます。
 一方で、これまで覆い隠されてきた生きづらさが顕在化するきっかけにもなりました。
 今の社会において、ひきこもりや不登校、依存行動などは個人の責任とされがちですが、その背景には必ず日本文化に基づく生きづらさがあります。
 そしてその生きづらさは、社会的に不利な立場にある人にこそ、より強く、深く影を落とします。
 そういった方々の声はか細く、または押し黙ることが常です。
 我々がまずすべきことは「知ること」に尽きるのではないでしょうか。
 今回は地域共生を願う様々な立場にある108名の方々と「生きづらさ」「つながり」をテーマとした交流を持つことができました。対面開催により、熱のこもった議論が繰り広げられ、皆様のこころに新たな火種が宿ったと思います。
 それは今後のつながりに応じて、より広く見渡す光となるしょう。今後のつながりに、共に活かしていけると嬉しく思います。
 今回の集いが、当事者、委員、支援者という垣根を超えて、それぞれに役割があり、尊重される機会を生み出していくきっかけになることを願っています。
 
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